筑波シリーズ ≪開催レポート≫

JAF筑波スーパーFJ選手権シリーズ

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Super-FJ

フォーミュラレース初参戦でポールtoフィニッシュ!
新星の登場とベテランの意地が激突した最終戦!!

4月7日の開幕戦を皮切りに年間6戦で争われる2019年のチャンピオンシップ。前戦までの5戦で4勝を挙げ「どうしてもスーパーFJでシリーズチャンピオンを獲りたい」という念願を前戦で叶えて卒業したKAMIKAZE選手が不在となった最終戦は、シリーズ参戦を続けてきた他のドライバーにとって筑波選手権を締めくくる一戦となる。ここまでのポイントで年間ランキング2位を確定している秋山健也選手は当然ながらポールtoウインを狙い、僅か1ポイント差の本田選手と小谷選手もまた、この最終戦の順位と共にランキングも睨んだレース展開が求められる。

定刻通り9時35分にスタートした公式予選は秋山選手、本田千啓選手、鶴岡秀麿選手の順でコースイン。秋が深まり気温18度という中、1コーナーでコースアウトしたマシンによる赤旗が解除となった3周目、突如リーダーボードのトップに躍り出たのが伊藤駿選手。来シーズンからのレギュラー参戦を念頭に最終戦にスポットエントリーした伊藤選手は、フォーミュラカーはおろかレース経験も数戦のみという20歳のルーキー。他の選手がタイムを上げてくる中盤以降を前に、とりあえず早めのアタックを仕掛けたかに見えた動きで6周終了時には秋山選手、本田選手、上吹越哲也選手に続く4番手までダウン。ところが8周目に1分00秒546を記録した秋山選手を、伊藤選手が9周目に1分00秒190で上回るとにわかに雲行きが変わり始める。各ドライバーがベストタイムを記録し始める20分間の予選時間も後半になっても、伊藤選手のタイムが破られることはなく、逆に伊藤選手自身が14周目に、この日唯一の1分切りとなる59秒897を記録してポールポジションを獲得。予選後の伊藤選手は「これまで練習走行しかしていない中で、初めて装着した新品タイヤのフィーリングを探りながら周回を重ねたため、最後の最後にタイムアタックをすることになりました」と、初参戦らしい戸惑いの中にも初参戦らしからぬ冷静なコメント。

この超新星に対して「練習走行からマシンの調子はよくて、自分自身のコンディションも悪くないです。伊藤選手は前日のスポーツ走行からの速いと感じていましたが、決勝ではスタートを決めて1コーナーで前に出れば、自分の方が上だと思うのでトップチェッカーを狙います」と1分00秒546で2番グリッドを決めた秋山選手。1ポイント差対決となる本田選手と小谷選手は、本田選手が1分00秒678で3番手、4番手に1分00秒807の小谷選手となった。これに続く5番手は1分00秒896の高橋三徳選手、6番手に1分01秒093の上吹越哲也選手、7番手に1分01秒139の塚本成人選手、8番手に1分01秒248のユウジロウ選手、9番手に1分01秒579の林寛樹選手、10番手に1分02秒835の稲生幸敏選手と続く。鶴岡秀麿選手はマシントラブルにより予選を2周で終えたが、予選後の修理が間に合い決勝へと駒を進めた。

注目の決勝レースは13時37分、気温約21度、路面温度29度の中でスタート。ポールポジションに向かう伊藤選手には「スタート進行も初めてなので、グリッドに並んでエンジンを止めるタイミングもさっき教えたぐらいです」とチームスタッフが語るほど初々しいデビュー戦となったが、レッドシグナルがブラックアウトするや否や、これ以上ないスタートで1コーナーに飛び込んでいく。追うべき立場の2番手グリッドの秋山選手には、逆に4番手グリッドから外側にマシンを振った小谷選手が並び掛け、1コーナー半ばでは一瞬先行したものの「テールが少し出たものの曲がれると思いました。しかしタイヤに熱が入っていなかったようでスライドが止まらずスピンしてしまいました」と痛恨のコースアウトを喫して最後尾までダウン。2番手をキープした秋山選手を追う立場となったのが、絶妙のスタートで小谷選手と本田選手の間隙を突いて3番手で1コーナーを立ち上がった上吹越選手だった。

トップの伊藤選手は、とてもルーキーとは思えない落ち着いた走りで2周目以降は早くも独走態勢を構築。ブレーキングもコーナリングも慌てることなく無理なくスムーズで、ベテランドライバーのような余裕さえ感じさせるほど。その速さは2番手の秋山選手をして「自分もかなりプッシュしましたが伊藤選手の速さは想像以上で、現状ではちょっと手が打てないと判断して2番手をキープすることに専念しました」と言わしめるほどで、上位3台はそれぞれが完全に単独走行状態となる。

対してエキサイティングだったのは4番手以降の争いで、1周目1コーナーをうまくクリアした予選7番手の塚本選手を先頭に、本田選手、ユウジロウ選手、高橋選手、林選手、鶴岡選手の6台が数珠つなぎ状態となり、各コーナーで白熱のせめぎ合いを展開。なかでも本田選手と高橋選手の猛プッシュは苛烈だったが、塚本選手は巧みなライン取りで頭を押さえていく。

この団子状態を虎視眈々と狙っていたのが小谷選手。「自分のミスで1周目に最後尾まで落ちましたが、スーパーFJ参戦初年度をこんな結果で終わらせることはできない。自分には蓄えてきた力があるんだと信じて、時間をかけずに前の選手が気を抜いた瞬間を見逃さずに抜くことだけに集中しました。途中、最終コーナーで本田選手がコースアウトしているのを確認しましたが、気持ちを切らすことなく攻めました」と4番手グループに追いつき、11周目の第1ヘアピン入り口で塚本選手のインを刺してオーバーテイク、4番手まで順位を上げることに成功していた。

4番手争いが白熱する中でもトップの伊藤選手の快走は続き、12周目にファステストラップを記録。秋山選手、上吹越選手ともに懸命に追うものの、10周を過ぎた頃には各車のタイムギャップが4~5秒ほどになり単独走行状態となり、初レースでうれしいポールtoウインを達成。来年度のシリーズ参戦を目指す伊藤選手にとっては幸先のよいスーパーFJデビューレースとなった。2位に秋山健也選手、3位で「おっさん、メッチャ頑張った」と上吹越選手がゴール。

怒濤の追い上げを見せて4位となった小谷選手以下は、5位に塚本選手、6位にユウジロウ選手、7位に高橋選手、8位に鶴岡選手、9位に本田選手、10位に稲生選手の順でゴールとなった。

レポート レース風景

スーパーFJ初参戦とは思えない盤石のスタートで、トップで1コーナーに飛び込む伊藤選手。来年のことを言うと鬼が笑うと言うが、来シーズンレギュラー参戦することとなれば他選手にとっては驚異となることだろう。

レポート レース風景

予選4番手からマシンを外に振り、絶妙な加速で1列前の秋山選手をパスしながら1コーナーに進入する小谷選手。その結果は単独スピンに帰結するが、後の追い上げは目を見張るものがあった。来年はシリーズチャンピオンを目指すとのこと。

レポート レース風景

スタートをうまく決めて予選7番手グリッドから4番手にジャンプアップした塚本選手は4番手グループの先頭を死守。ベテランならではのレース運びが光った。

レポート レース風景

序盤で築いたリードを保ちながら、自分の走りを貫く伊藤選手。レース中盤では第1ヘアピンで2番手秋山選手に大差をつけていた。2019年シリーズランキング2位の秋山選手にとっては新たな強敵が登場した形だ。

レポート レース風景

上吹越選手はMASTERSでは表彰台トップ常連だが、総合ではここまで表彰台未経験。気合いを入れ直した最終戦は抜群のスタートで1周目にポジションを上げて3番手をキープ。4番手以降に10秒近くのタイム差をつけて3位となり総合での表彰台をゲット。

Winner's Interview

S-FJ 表彰台

優勝
伊藤 駿選手

「来年から本格的にシリーズ参戦を考えていて、今回の目的は本物のレースを体験することだったので、このような結果になってちょっと面食らっています。子供の頃に兄がやっていたプレステのグランツーリスモで見たのが初めてのレースでしたが、これまで自分自身は特にモータースポーツと関わることはなく、車を運転するのも免許を取ってからというような感じでした。もちろん、今回の参戦にあたってS-FJのマシンで練習を重ねてきましたが、カートを含めてレーシングカーに乗るのが初めてなので、マシンのセッティングやコンディションがどうとかいうことか、実はよく分かっていないのです。だから予選も、初めて装着した新品タイヤの限界を探りながら出したタイムですし、決勝でも1コーナーをトップで回れたので、後はプレッシャーを感じることもなくタイムアタックのような気分で走行していました。ただ、レギュラー参戦する予定の来年は、本能だけでなく考えて走ることが必要になると思います。初戦で、このような成績を挙げたことは自分自身へのプレッシャーになりますが“あれは偶然だった”と言われないように、しっかり練習して来年に備えます」

2位
秋山健也選手

「ランキング2位を確定してKAMIKAZE選手もいない中、マシンも自分自身のコンディションも悪くない中で、予選はともかく決勝は自分の方が強いんだという気持ちで挑みました。伊藤選手の速さには練習走行から気付いていましたが、決勝の1コーナーで前に出られなかったことで、その後の流れが決まってしまいました。速いライバルがいる方がモチベーションが上がります。来年のシリーズチャンピオンを目指して練習を重ねます」

3位
上吹越哲選手

「今日はひと言“おっちゃん、チョーうれしい!”です。他のレースで休んだ第5戦以外の4レースとも、常にMASTERSの表彰台には上がれても……という状況が続いていたので、総合3位の今回のレースは完璧でした。筑波は1周目で前に行かないと抜きどころがないので、スタートで周りがちょっと遅れたすきに真ん中から1コーナーに入って3番手につけたことが結果につながりました。この調子で頑張って来シーズンも参戦したいです」

Winner's Interview

S-FJ 表彰台

MASTERS 3位
塚本成人選手

「予選7番手からスタートが決まったので、ポジションを守る走りに徹しました。FJ1600時代から長いブランクを経て、今年は二十数年ぶりシーズンを通してエントリーしました。昔は後ろにつかれるとビビっていましたが、歳を重ねてメンタルが図太くなった分、自分より速い選手には申し訳ないけど露骨なブロックは避けながら、押さえるところはきっちり押さえて走りました」

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