Race Report
Super FJ Rd.5
JAF筑波/富士スーパーFJ選手権シリーズ 第5戦
上位5台が59秒台を記録した大接戦の予選から抜け出した伊藤駿が今季3連勝!!
スーパーFJはフォーミュラレースの入門クラスであり、若手ドライバーのステップアップのための登竜門であるとともに、ベテランドライバーにとってもチャレンジしがいのあるカテゴリーである。今年は新型コロナウイルスによって世界中のモータースポーツカレンダーが大きな影響を受け、筑波スーパーFJ選手権も3月から11月までに6戦を開催する予定だったが全4戦に変更を余儀なくされた。レーシングドライバーとしての未来を見据える若い参加者にとっては、レース数が減少したことでこれまで以上に1レースごとの重要性が増し、結果にこだわる姿勢が重要となる。
前日の雨がやや残る中、公式予選は9時20分からスタート。8月開催の前戦は気温30度に迫ろうかという暑さだったが、この日は気温21℃、路面温度は25度というコンディション。今戦はスーパーFJレース初エントリーの2台を含む全9台が予選に出走し、前線の決勝結果に応じて今シーズン2戦2勝で波に乗る伊藤駿選手からコースイン。1、2戦で伊藤選手に迫る走りを見せ、前戦ではポールポジションを獲得しながら決勝2番手走行中に単独スピンで6位に沈んだ草野裕也選手は後方6番手からコースイン。3月の第1戦で予選2番手ながらマシントラブルでリタイアした草野選手にとって、この予選スタートは8月にも経験していた展開だった。「実は前戦では、後方からコースインしたため前車を抜きながらタイムを出そうと焦った部分がありました。だから今回は他のマシンを先に見送って、自分のスペースができたところで予選アタックを行うプランでした」と語ったとおり、伊藤選手、本田千啓選手らと並び1分フラット台のラップタイムを刻む中、6周目に、この日最初の1分切りとなる59秒868をマークしてリーダーボードのトップに躍り出る。これに伊藤選手、今戦唯一のマスターズクラスエントリーの秋山健也選手、内藤大輝選手、前戦の2位入賞で弾みをつけたい本田選手が続く展開となった。草野選手はその後も好調で14周回中10周目に59秒370をマークして2戦連続ポールポジションを獲得。続いて「練習走行までは出ていなかった若干の不具合があったものの、それを考慮すればうまくまとめることができました」という伊藤選手が59秒767で2番手となり、決勝のフロントロウは3戦連続で草野選手と伊藤選手が並ぶこととなった。
この2台に続いたのは予選終盤まで5番手前後だった野島遼葵選手。レーシングカートドライバーとして実績を積み、今年第1戦からスーパーFJへの参戦を開始した野島選手は、第1戦の予選でも59秒台を経験しており、20周回中18周目に59秒956を記録して自身初の3番手を獲得。4番手となった内藤選手も予選序盤から上位タイムを連発し、20周回中20周目で59秒988を記録。マスターズ唯一のドライバーとして予選終盤まで3番手をキープしていた秋山選手は59秒996のタイムで5番手に。「序盤はいいポジションでタイムも納得できるペースでしたが、そこから守りに入ってしまい後半のアタックが弱かったかもしれません。ただタイムは僅差なので、スタートで前に出ることを意識します」と決勝に気持ちを切り替える。この5台までが59秒台であることからも上位の拮抗ぶりが理解できるだろう。さらに6番手には1分00秒043の本田選手、7番手に1分00秒043の関根陽幹選手、8番手は1分00秒159の地頭所光選手、9番手に1分00秒342の坂野貴毅選手が続いた。
予選終了から決勝レースまでの間に曇天だった空から雨が降り始め、パドックではレインタイヤの準備も整い始めたものの、決勝がスタートする15時前には雨は止み各車スリックタイヤでグリッドに整列。気温は23度、路面温度は26度でお昼を挟んでも予選時点からほとんど変化はない。違いと言えば予選から決勝までにコースを濡らした雨だけだ。しかしフロントロウの2台にとって、この路面コンディションの変化が明暗を分けるポイントとなった。筑波サーキットのグリッド順ではポールポジションの草野選手がイン側、2番手の伊藤選手がアウト側となり、コースはイン側に向けて傾斜している。ドライコンディションなら1コーナーに近いポールポジションが有利だが、「イン側が濡れているのはチームスタッフとも確認していて、スタートは慎重にいこうと話していました」とレース後に草野選手が語るように、レコードラインではないためウエットパッチが残っている。
その草野選手のグリッドがウエット気味だったのを見逃さなかったのが伊藤選手。「グリッドとタイヤの位置をずっと見ていて“これはスタートでいけるかも”と内心思いました。そしてスタートした瞬間“いけた!”と実感しました」。スタートでほんの一瞬出遅れた草野選手を見逃さず力強く前に出た伊藤選手は、マシンを外に寄せる草野選手のフロントノーズを制して1コーナー入り口で早くもトップに躍り出る。濡れた路面に気勢をそがれたのは草野選手の後方、3番手からスタートした野島選手も同様だった。「スタートでホイールスピンを喫しましたが、後続のマシンを1コーナーまで抑えることができたので助かりました」。予選順位5番手の本田選手まではスムーズに1コーナーをクリアしていくが、その後方では内藤選手、関根選手、地頭所選手、坂野選手の4台が絡み関根選手がスピン。予選4番手だった関根選手はこの間に8番手まで後退することになってしまう。
今シーズンの過去2戦と同様、トップに立った伊藤選手の走りは盤石で、6周目に59秒795を記録した後にもコンスタントに59秒台を連発。これに対して2番手の草野選手は序盤、伊藤選手との差を2秒近くに広げられたものの中盤から自らの走りに集中したドライビングを取り戻し、9周目には決勝レース中のファステストラップとなる59秒536を記録しながら伊藤選手を猛追。14周を終える頃には2台の差は1秒を切るところまで詰まったものの終盤に至っても伊藤選手は59秒台で快走を続けて、草野選手に対して0.401秒のギャップを保って1位でゴール。予選の速さは誰もが認めるもののここまで結果に結びつかなかった草野選手は2位となり、筑波スーパーFJでは初の表彰台となった。同じく初表彰台の野島選手が3位に続き、秋山選手は予選よりひとつ上の4位でゴール。以下5位に本田選手、6位にスーパーFJ初レースの坂野選手、7位も同じくスーパーFJ初レースの地頭所選手、8位に関根選手の順にゴールした。なお予選4番手からスタートした内藤選手は14周でリタイアしている。
今戦の結果、最終戦を待つことなく伊藤選手の年間シリーズランキングトップが確定した。しかし草野選手が決勝2位となったことで、ランキング2位以下の争いが混戦模様となってきた。今年は年間4戦で雌雄が決する短期決戦なので、1戦ごとの重みが例年以上に増しており、上位を目指す選手にとってポイントの取りこぼしは許されない。それだけに次戦の2020年最終戦は白熱したレースが展開されるはずだ。
Winners Interview
優勝
伊藤 駿選手
「予選はちょっと問題があって、あれ以上のタイムは望めない状態でした。そんな中でも自分なりのベストを尽くせたので2番手は納得でした。だから草野選手のグリッドを見た時に“これはスタートが最大のチャンスだ”と思いました。決勝中も59秒8あたりで周回できたのでよかったです。16周目ぐらいの最終コーナーで外に膨らんで縁石に乗り上げかかり、アクセルを戻したら逆に危ないと思ってさらに踏み込んでやり過ごした時はヒヤッとしましたけど、攻め続けて勝てたことが大きな収穫です」
2位
草野裕也選手
「これまで決勝中にスピンしたりリタイアしたりしたことがなく、表彰台に乗れないシーズンも経験したことがないので、今年のスーパーFJでは心が晴れない展開が続いていました。予選でポールを獲得しでも“決勝で何があるか分からない”と後ろ向きな思考がよぎりましたが、モチベーションを下げないよう心がけました。伊藤選手に先行されると焦りがちですが、自分の走りでギャップを詰められたので、満足はできませんがホッとしています。前日の練習走行でマシンを壊してしまい、夜通しで修理をしてくれたメカニックにも感謝します」