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Race Report

TTC1400 Rd.4

様々なカテゴリーに分類されるモータースポーツの中で、比較的エントリーしやすいのがツーリングカーと呼ばれる市販車を改造して行われるレースである。排気量ごとに細かく分類されるクラスの中で、筑波サーキットにおいてベース車両の排気量が1400cc以下のマシンで行われるのがTTC1400である。新型コロナウイルスの影響により4戦で争われることになった2020年の3戦目は、年間ランキングを左右する重要なレースとなった。

筑波ツーリングカーシリーズ 第4戦

一発勝負の予選とレース運びが重要な決勝。まさに敵無し田中千夏無双!

春先から晩秋までを1シーズンとして開催される筑波ツーリングカーシリーズ。TTC1400は事実上EP82型トヨタスターレットのワンメイクレースで、使用可能なタイヤも決まっているため、タイム差が出づらいと思われがちだが、春先や夏場、ドライやウエットなど様々な天候条件によってドライバーの得手不得手があり、またマシンの特性やセッティングによって強みが発揮できるフィールドが異なってくる。だからこそ春先は苦手だが夏場は滅法強いとか、雨のレースこそ本領発揮というドライバーの個性が発揮でき、年間を通したポイント争いが大きな見どころとなる。ところが今年は新型コロナウイルスの影響によりTTC1400は最大4戦までしか行えないことが決定している。そのため、短期集中型シーズンにおいては、短期間でマシンを仕上げてどんな条件でも結果を出せる器量が求められる。

予選時点で気温30度に迫ろうかという前戦から約1カ月半、実質3戦目となる9月20日(日)の第4戦は、若干の肌寒ささえ感じる気温22度の中で予選スタート。前戦の決勝結果に従い田中千夏選手から順に、荒川智弘選手、八代勝也選手と続き8台のマシンがコースイン。互いのドライバーは手の内を知り尽くしているライバルでありながら、同じレースを戦う仲間だけに、誰もが前戦で優勝した田中選手をターゲットとしている。田中選手はこのクラス唯一の女性ドライバーにして2012、2013年のTTC1400を2連覇した実力派。昨年の年間チャンピオンである八代選手、同2位の荒川選手をもってしても歯が立たないというのがこれまでの展開。

タイヤの消耗を考慮して予選はできるだけ少ない周回数でまとめたいというのが多くのドライバーに共通した見解だが、そこには水温や油温などエンジン側が充分に暖機されているという条件が加わる。ここでコースイン直後にピットインしたのが田中選手。「思ったよりも気温が低くて水温が上がらなかったので、ラジエターをちょっと塞ぎました。コース上で走りながら温度が上がるのを待つのはもったいないので。再度コースインして2周目で1分07秒台が出たのでよかったですが、決勝レースを考えるとあと1周手前でタイムを出したかったです」とまったく隙がない。結果、予選に出走した8台の中でもっとも少ない周回数で1分07秒692をマークしてポールポジションを獲得。2番手にはコース上から他の車両が減ってくる予選チェッカー直前にタイムアタックを敢行した八代選手が1分08秒373で続き、3番手は1分08秒479の荒川選手となった。前戦で予選2番手、決勝2位だった荒川選手は「予選はある程度の手応えがありましたが、走行後に田中選手と0.8秒近くの差があると知って愕然としました」と語ったとおり、田中選手の状況把握能力と対応力は秀でているようだ。4番手の堀雅清選手が1分08秒703で、2番手から4番手までが1分08秒台を記録。5番手には菅原芳武選手が1分09秒030、6番手は三宅泰正選手が1分09秒107、7番手は小山正博選手が1分10秒943、1分11秒133の大久保兼一選手は8番手となった。

今戦のタイムスケジュールでは午前9時45分の予選から15時30分の決勝まで空き時間が長く、その間に曇り~小雨~曇りと天候がコロコロと変わったためタイヤ選択に迷うチームやドライバーもいたものの、決勝時刻にはコースはドライとなりレースがスタート。ポールポジションのグリッドはコースの内側となり路面が濡れている部分もあるものの、田中選手は絶妙のスタートを決めて1コーナーにトップで飛び込む。田中選手攻略のカギは1周目1コーナーとしていた八代選手、荒川選手の両名にとっては前戦に続き逃げられた格好となる。ただ田中選手も「1コーナーはうまくクリアできましたが、その後タイヤのグリップが安定する2周目ぐらいまでは八代選手が速くて後ろを見て押さえる走りになっていました」と決して余裕があったわけではなかった。しかしタイヤが温まるにつれて本来の速さを発揮しはじめ、早くも4周目に決勝ファステストラップとなる1分08秒542を刻み独走態勢を形成。2番手の荒川選手も離されまいとギャップを死守するものの追いつくまでは至らない。この上位2台に対して3番手以下は序盤でめまぐるしく順位が入れ替わる。予選3番手の荒川選手は1周目のダンロップコーナーでグリーンにコースアウト、2周目の1コーナーでは菅原選手と接触し5番手に後退。荒川選手、堀選手、三宅選手による3番手争いから一歩抜け出したのは予選6番手の三宅選手で、3周目以降は3番手をキープ。

10周目以降は上位2台と3位争いの3台までの間隔が約4秒、ここから6~8番手までが約20秒という間隔を保ちつつ、終始レースを引っ張ったのは田中選手。「今回はコーナーではテールが出過ぎず、グリップし過すぎずの絶妙なセットアップが決まったので、無理せず楽にドライビングできました」という言葉通り、実にスムーズな走りを見せトップでチェッカーを受けた。無理、無駄、ムラのないお手本のようなレース運びは、2年連続年間チャンピオンを獲得した実力と貫禄を見せつける盤石の展開だった。続く2位には最後まで諦めず食らいついた荒川選手、3位は予選6番手からポジションアップした三宅選手、4位は荒川選手、5位は堀選手、6位は菅原選手、7位は大久保選手、8位は小山選手の順でゴールとなった。

EP82型スターレットがTTC1400クラスのベースとしては唯一無二の選択肢。絶版となって久しいため補修部品の手配に苦労する部分もあるが、セットアップを煮詰めてドライバーが代わりながら長く愛用されるマシンも多い。

イン側グリッドはややウエットというハンディをものともせず、1周目1コーナーにトップで飛び込む#11田中千夏選手。#72八代勝也選手にとっては予選タイムが速く、マシンの性能差が小さく、レース中のミスも少ない田中選手を上回るには1コーナーで先行するのが必須条件だったが僅かに届かず。

他のドライバーから「あんなに小さく曲がれるのは田中選手だけ」と評される田中選手のコーナリング。“テールが出過ぎず、出なさ過ぎず”のセッティングが決まった今回は、いつにも増して挙動がスムーズで、決勝後には「いろんな方がマシンを作ってくれるおかげです」と感謝のコメント。

中盤で3番手争いを繰り広げた#13三宅泰正選手、#31荒川智弘選手、#9堀雅清選手。#31荒川選手は「自分が慌てたせいで他のドライバーを驚かせる結果を招いてしまいました」と反省しながら「筑波で長くレースを続けて、チャンピオンを獲るまで頑張ります」と前向きな姿勢を見せた。

Results » 予選 決勝

Winners Interview

優勝

田中千夏選手

「コースインした途端に“あ、水温上がらない”と気づいてラジエターを塞ぐためにピットインした予選はちょっと誤算でした。新しいタイヤでタイムが出るタイミングを考えると、このピットインがなければ決勝1周目で八代選手のアタックにヒヤヒヤすることもなかったんですけどね。タイヤが温まってからはリアのグリップバランスがよく楽に走行できました。ただ、予選時に異常を感じたドライブシャフトを決勝までに交換してもらうハプニングもあり、周囲の方のサポートがあってレースできていることを実感しました」

2位

八代勝也選手

「今回勝っておかないとシリーズポイントでも不利になる一戦だったので意気込んでいました。予選ではタイヤやサスペンション、ドライビングでさまざまなアプローチを重ねて、前戦よりかなり好転しました。1コーナーまでが勝負となる決勝は、スタートはしっかりグリップして前に進めましたが、伸びが一歩足りずに追いつけませんでした。もちろんレース中はコンマ1秒のミスもしないように走りましたが、田中選手を上回るにはもう一手必要だと実感しました。次戦も1ポイントでも多く獲得できるよう戦います」

3位

三宅泰正選手

「以前からロードスターのパーティーレースには出ていましたが、今シーズン初めてTTC1400クラスに参戦しています。第1戦は7位、2戦目は5位で今戦が3位なので順調だと思われるかもしれませんが、予選で上位だった3台がゴチャゴチャ絡んでいる間に前に出られたのでタナボタみたいな部分もありますね。ただ予選でタイヤの選択ミスがあって、それを交換した決勝で自己ベストを更新できたので自信になりました。最終戦はエントリーできないのですが、この結果を受けて来シーズンをどうするかこれから考えます」