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Race Report

Circuit Trial Rd.4

3月の開幕戦から11月の最終戦まで、本来であれば年間5戦のシリーズ開催が予定されていたJAF筑波サーキットトライアル選手権。ところが年初から世界中で猛威をふるう新型コロナウイルスの影響を受けて5月に開催予定だった2戦が中止に。シルバーウイーク最終日となる9月22日(秋分の日)開催の第4戦は実質的な2戦目となり、モータースポーツの再開を待ちわびたドライバーたちは精力的にラップタイムを競い合った。

JAF筑波サーキットトライアル選手権シリーズ 第4戦

31台が集まる半年ぶりの開催で、3クラスでコースレコードを樹立

数あるモータスポーツの中でも、サーキットトライアルはナンバー付きの街乗り仕様の車両でエントリーできる手軽さが特長の競技だ。愛車でサーキットを走るのなら走行会もあるが、こちらはJAF公認の競技として認められているのが大きな違い。車両の種類やチューニングの内容によってクラスが細かく分けられ、それぞれのクラスで順位によるポイントで年間ランキングが決まるため、一年を通して継続的に楽しむことができる。競技の方法は決められた時間でサーキットを周回し、その中で最も早い1周のタイムによって順位を決めるラップタイムトライアル。簡単に言えばレースの予選だけで順位を決めるようなイメージだ。いわゆる“決勝レース”はないが、軽自動車から高出力4WDモデルまでクラスが異なるさまざまな車両が同時にコース上に存在するため、どのようにスペースを作って、どのタイミングでアタックを仕掛けるかといった周囲への細やかな配慮や注意力が必要で、自分のマシンの強みを素早く引き出すテクニックも求められる。筑波サーキットでは15分のセッションを2度行い総合順位を決めるが、合計30分の走行時間中に“自分の間合い”でアタックできる周回をどれだけ多く取れるかが勝負の分かれ目になる。

7クラス合計31台が集まった今戦は、過度な混雑を避けるため全体を2つのグループに分割してタイム計測を開始。B1クラスは5台がエントリーし、第1ヒートからカプチーノを操る吉崎久善選手とマーチの柴田尚選手が2台揃って1分09秒台を記録。このクラス常連である二人は2ヒート目も1分09秒台に入ったものの、柴田選手がマシントラブルによりコースサイドでストップ。結果的に第1ヒートで1分09秒473を出した吉崎選手が優勝、2位に第2ヒートで1分09秒723を記録した柴田選手、3位に1分10秒153(第2ヒート)の内田和利選手、4位には1分11秒845(第2ヒート)の斉木雅昭選手選手、5位には1分26秒608(第1ヒート)の関和幸司選手が続いた。

7台がエントリーしたB2クラスでは、前戦で2位に入賞した菊間邦明選手が第1ヒートで従来のレコードタイム1分10秒075を更新する1分09秒674を記録、続く第2ヒートでも1分09秒964を残して堂々の優勝を飾った。2位には1分10秒397(第1ヒート)の日向孝之選手、3位は1分10秒406(第2ヒート)の中澤伸幸選手、4位に1分11秒220(第1ヒート)の安本悠人選手、5位は1分11秒972(第2ヒート)の太田高之選手となった。

この日1台のみのエントリーとなったB3クラスでは、スイフトをドライブする松栄吉彦選手が第2ヒートでコースレコードとなる1分09秒484で優勝。このクラスの従来のレコードタイムは1分15秒825だったので大幅に記録を更新。

昨シーズン5戦5勝で完全勝利したトヨタ86の市川忠康選手のいるB4クラスは3台の86がエントリー。優勝は今回も市川選手で、前戦で自らが更新したレコードタイムを更に上回る1分05秒751を第2ヒートで記録。「コースインしたラップでタイヤとブレーキを温めて、コースが混雑する前に計測1周目から全力でアタックするよう心がけています」と語ってくれた。続く2位は1分08秒521(第1ヒート)の小田桐弘幸選手、3位に1分10秒109(第2ヒート)の田中洋一選手となった。

B5クラスは昨年ロータスエリーゼで3戦3勝を飾った森田正穂選手が安定の優勝。タイムは第2ヒートに記録した1分05秒475。2位に1分07秒521(第1ヒート)の芳田悟選手、3位に1分07秒873(第2ヒート)の菊池誠一郎選手、4位は1分26秒(第2ヒート)の渡辺千尋選手が続いた。

スバルインプレッサや三菱ランサーといったハイパワー4WDモデルが9台エントリーしたB6クラスでは、前戦でコースレコードを叩き出したインプレッサの澁澤栄一選手が連覇。タイムは第2ヒートの1分02秒146。これに肉薄して2位となったのが第2ヒートで1分02秒358を出したランサーの高岩良行選手。3位は昨年のクラスチャンピオン馬場元選手で1分02秒581(第1ヒート)。4位は1分03秒162(第2ヒート)で蝶間林一男選手、5位は1分03秒733(第1ヒート)の佐藤清貴選手となった。

今回2台がエントリーしたPN1は軽自動車クラスで、優勝したのはアルトワークスの林孝選手でタイムは第2ヒートの1分18秒791。2位は1分20秒211(第2ヒート)の萩野司選手となった。

本来であれば年間5戦で争われる予定だったところが、そのうち2戦が中止となったため最大でも全3戦での開催となった2020年シリーズ。ただし今年は世界中が影響を受けたという特殊事情もあり、3戦が成立すればJAFのシリーズ戦として認定されることとなった。従って11月1日の第5戦の結果次第でシリーズポイントが上下するドライバーにとっては、まだまだ気の抜けない戦いが続くことになる。

参加者の声

B1クラス

斉木雅昭さん

前回の自己ベストを上回るのが目標です

最初はジムカーナがきっかけで、富士スピードウェイのサーキットトライアルやマツダファンサーキットトライアルなど、モータースポーツ歴は25年ぐらいになります。今年は富士が走れないので、だったら筑波を走ってみようと初めて参戦しました。レースとなると一人では参戦できないし、車両を壊すリスクも増えますが、限られた周回でクリアラップを見つけてタイムを出すサーキットトライアルは、レースの予選と同じ感覚でおもしろく、チャレンジしがいのある競技だと思います。

B1クラス

内田和利さん

タイムアタック中にもハイブリッドバッテリーを充電します

サーキットを走り始めたのは24年ほど前で、10年所有しているこのCR-Zで2016年には富士のサーキットトライアルでクラス優勝したこともあります。その後競技から離れましたが、最近になって再びタイムアタック競技がやりたくなり、それなら記録が残るJAF公認の方がいいと今年から筑波に参戦しています。前戦はB2クラスでしたが、今回はB1と指示されてクラスが変わっています。それ自体はレギュレーションの解釈なので致し方ないですが、前戦5位で獲得したポイントが抹消となったのは残念ですね。

B2クラス

安本悠人さん

1年間を通じてポイントを競えるのが魅力ですね

このロードスターともう1台所有しているアクセラで、マツダファンサーキットトライアルに5年ほどエントリーしてきました。JAF戦のサーキットトライアルにエントリーするとなると岡山国際かSUGOになるので、静岡在住の自分にとっては筑波が一番近いのでこちらに来ています。3月の初戦で優勝でき20ポイントが獲得できたので、せっかくなら年間通してチャレンジしてみようと本腰を入れました。あと、今年の2月でロードスターのローンが終わったことも、積極的にモータースポーツに参加する動機になっています。

B6クラス

澁澤栄一さん

自走で出られるモータースポーツを勧めていきたいです

2011年にスバル車専門ショップを共同で立ち上げ、カスタムやチューニングを行っています。私自身は1990年代半ばから富士や筑波でサーキット走行を行っており、2018年にはSタイヤのインプレッサで1分を切っています。ただ、お客さんにもこれまで以上にモータースポーツやサーキットに親しんでもらいたくて、車検に通るナンバー付きの車両で出られるサーキットトライアルに参戦を始めました。富士に慣れたお客さんは筑波を敬遠しがちですが、私自身は筑波は好きなコースなのでもっとアピールしたいですね。

PN1クラス

萩野司さん

自分でハンドルを握ればドライバーと気持ちが通じると思います

勤務する会社のチームで今年からラリーのコ・ドライバー(ナビゲーター)を務めています。6月に国内A級ライセンスを取得しましたが、来年行われるはずのラリージャパンを目指すことになり、私も国際Rライセンスが必要になりました。そのためは今年中にJAFの公認競技6戦への参戦が必須となり、ラリーに加えてサーキットトライアルにも参戦することにしました。このコペンは普段の通勤車両ですが、自分でハンドルを握って競技を経験することでラリーの時のドライバーの気持ちが理解できればと考えています。