Race Report
Super FJ Rd.3
2022 JAF筑波/富士スーパーFJ選手権シリーズ第3戦
蒼き昇竜、ポールtoウィンで二連覇達成!! 昨年ランキング2位の安田航選手が今年初の表彰台へ!!
JAF筑波シリーズは、片山右京選手など日本を代表するF1レーサーが若手時代に挑んだシリーズの系譜を継ぐフォーミュラレース。日本モータースポーツ界を背負い立つ可能性を秘めた若人達がしのぎを削る闘いは、早くも前半戦の最終レースを迎えた。これまでの2戦や練習走行で多数のデータを獲得した各チームは、今年のコントロールタイヤであるダンロップタイヤのセットアップに順応しつつある。その中でも一歩先を征くZAP。表彰台を独占する王者に牙を剥くファーストガレージとゼンカイレーシング。前回と同様、三つ巴の闘いとなった第3戦の決勝は波瀾の展開となった。
「毎回天気が怪しく、予選になるまでどういう状況でアタックできるのか不安」と前回トップの田上蒼竜選手がため息をつくように、またも前日の降雨で、朝方はウェット気味な路面状況。しかし次第に曇天模様から、ジリジリと太陽が照り付ける初夏のような陽気に変化し、寒暖の差がある厳しいコンディションとなった。前戦から僅か半月程で挑んだ予選では、田上選手がポールポジションを獲得。今シーズン2台で参戦しているファーストガレージは、セッティングの幅が広がったことでマシンの改善に成功。安田航選手が第2戦と同じく2番手に食い込んだ。そして3番手に稲葉摩人選手、4番手は白崎稜選手のZAP勢、その次をゼンカイレーシングの武者利仁選手、ファーストガレージの岩本瞬選手が追うという、今シーズン盤石の布陣となった。
満を持して迎えた決勝では、スタートから大トラブルが勃発。第2戦と同じく、またしても安田選手が出鼻を挫かれ、1コーナーで4番手に後退してしまう。田上選手はホールショットを決めたが、チームメイトの稲葉選手や白崎選手がピタリと食らいついて激闘の予感。混乱はそれだけでなく、1周目の第1ヘアピンで大規模な多重クラッシュが発生!!直ぐ様、レッドフラッグが振られ、レースが一時中断する事態に。観客席がざわつく中、4台が走行不能でリタイアしてしまう。このアクシデントによりSFJの決勝は振り出しに戻り、フォーメーションラップ1周を含む15ラップへ変更となった。このイレギュラーな状況が吉と出たのは、田上選手と安田選手。「一回目のスタートの方が、チームメイトが後ろからガツガツと来ていて怖かったです」と振り返る田上選手。痛恨のオーバーテイクを許してしまった安田選手は「ある意味、一回練習できましたし、改善点も見つかりました。正直、運が良かったです」と挽回のチャンスとなった。一方、凶と出てしまったのは3番手の稲葉選手。「タラレバですが、赤旗がなかったら自分のレースの組み立てが上手くいっていたと思います」と唇を噛んだ。仕切り直しの一戦でも好スタートを切ったのは田上選手。2番手の安田選手と次点の稲葉選手がバトルしながらトップを追いかける予選順位通りのレースが展開された。「今回表彰台に乗らないとチャンピオン争いが厳しくなる」と危機感を募らせていた安田選手。早々に稲葉選手を振り切ると、10周目には田上選手のラップを上回る勢いを見せた。終盤はレースを終始リードしていた田上選手vs僅差に迫った安田選手の一騎打ち。そこで試合巧者ぶりを発揮したのは田上選手。「抜きづらいサーキットなので、一回前に出てしまえば押さえられると思っていました。安田選手のラップタイムが速いのは分かっていましたが、落ち着いてミスなく、ベストを尽くして、なるべく近づかせないように意識していました」と前回王者の貫禄を見せ、堂々の1位を獲得。今シーズン2連勝を飾った。そして、ZAPの牙城を崩した安田選手は今シーズン初の2位、稲葉選手は3度目の表彰台に上がった。また、マスタークラスで首位を死守していた秋山建也選手は、予選から調子が上がらず。決勝のクラッシュにはギリギリ巻き込まれなかったが、夕田大助選手にトップの座を明け渡す結果となった。
本戦で今シーズンの前半戦が終了。55ポイントを獲得した田上選手がランキング単独トップとなり、11ポイントのビハインドを追う稲葉選手が2位、37ポイントの白崎選手が3位。相変わらずZAPがランキング上位を独占した。しかし、第3戦で復調を見せた安田選手が3位に僅か4ポイント差と迫り、後半戦に粘り強い追い上げを見せる可能性も大いにある。絶好調の田上選手が最後まで首位をキープできるか。開幕ダッシュを決めた稲葉選手、表彰台常連だった白崎選手が今後、驚異的な成長を遂げるか。はたまた、追い込まれた安田選手、岩本選手、武者選手が覚醒するか。筑波SuperFJ選手権は後半戦も、群雄割拠の戦国時代の様相となりそうだ。
Winners Interview

優勝
田上蒼竜選手
「後ろの方のタイムが速く、展開に助けられた部分がありました。速さの面で課題があると思います。安田選手の方がラップタイムは速いと分かっていましたが、その中で自分がミスをしないで、落ち着いて自分が出せるベストを尽くして、なるべく近づかせないようにしようと意識してやっていました。ラップ数が残り何周とチームが出してくれているのですが、もう大丈夫だと安心した最終ラップにベストが出ているので、メンタル的な課題もあるなと感じました。どうしてもミラーでちらちらと気にしてしまうので、もうちょい横綱のようにドシッとトップで構えられる走りをしたいです。ファステストも予選も決勝も獲って、パーフェクトにしたいなと思います」
2位
安田航選手
「今回表彰台に乗らないとチャンピオン争いが厳しくなると思っていました。練習から今回も調子は結構良かったのですが、ただ田上選手だけはちょっと速いなと警戒していました。その結果、予選も負けてしまいました。チャンピオンを獲るためには、スタートはまだまだ課題が残ります。田上選手よりラップタイムは上でしたが、一周目の稲葉選手とのバトルで大分ロスしてしまい、1、2周目でペースが上がらなかったことが敗因。今年はメンバーも変わって大変なのですが、ここからチャンピオンを獲れるように頑張ります。まだまだレースはたくさんあります。今回は2位なので、これからも勝利へ向けて勢いづけて頑張りたいと思います」