Race Report
TTC Rd.4
2022 筑波ツーリングカーシリーズ第4戦
TTC1400・荒川智弘選手が無傷の4連覇で年間チャンピオン初獲得!!逆境を乗り越え、伝統あるTTCの歴史を刻む!!
今シーズンもラスト2戦となり、遂にタイトル獲得に王手が懸かった筑波シリーズTTC1400/Vits Race。コンパクトなボディながら86勢と互角に渡り合えるパワフルな走りで、未だ多くのレーサーを魅了して止まないEP82トヨタ・スターレット。今回もそのワンメイクレースとなったTTC1400は、3連覇中の荒川智弘選手へシリーズチャンピオンの栄冠が目前に迫る中、2018年王者の貴島康博選手が3年振りに凱旋!!富士でシリーズ制覇の経験を持つベテランの山田納選手、前回3位の添田蓮太郎選手も好敵手として名を連ね、一筋縄ではいかない模様。一方Vitzクラスは、2連勝を飾る高橋宏選手と井上満夫選手のベテラン2名による一騎打ちとなった。
実は1分10秒台しか出せないスランプに陥り、苦悩の一ヶ月間を過ごしていたという荒川選手。思い描くタイムが出たのは、なんと前日。運命の一戦を首の皮一枚でギリギリつないだ予選は、4人中3人が8秒台を叩き出す拮抗した闘いに。貴島選手、山田選手という歴戦の猛者達がしのぎを削り、周回ごとに順位が入れ替わるような激しい展開となった。EP82型の生産終了から早26年。経年劣化が著しい車体故に、途中2台が白煙を上げるトラブルもあったが、いずれも大事には至らずにレースは続行。その結果、荒川選手が8回目のアタックで貴島選手に僅か0.032差の1分8秒451でトップに立ち、ポールポジションを死守した。「最後に逆転されて順位が転落することは散々あったけれども、ようやく生き残りました!結果で嬉し泣きしたのはレース人生で初めてです!」。苦境を打破し、王座獲得のチャンスを大きく手繰り寄せた。3番手の山田選手は荒川選手と0.369差で射程圏内に着け、添田選手は9秒台と少々出遅れた。
本降りとなっていた雨は決勝直前に収まったが、5クラス・12人のレーサー達はウェットレースを余儀なくされた。全体の4位から7位に着けたTTC1400勢は順位通りのスタートを切ったが、2周目から荒川選手の背後に貴島選手がピタリと貼り付く超接近戦に。あわや接触というTTCクラス本来のシビアな闘いが繰り広げられた。すると5周目で、貴島選手が第一コーナーから第一ヘアピンの間で詰まって行き場を失った荒川選手をオーバーテイク。しかしカーレースの神は、筑波で30戦も諦めず努力を続けた男に微笑む。貫禄の走りで颯爽と抜き去った貴島選手に、次の周回のダンロップブリッジ真下で勃発したAE86クラスのスピンに巻き込まれるアクシデントが襲う。その右後ろの位置にいた荒川選手は、運良く無傷ですり抜けると、単独トップに返り咲いた。その後は独走状態。優勝が目前となった残り2、3周では、「惜敗した昨年のシリーズ、息子の誕生、愛する地域の人々など、様々な人生のターニングポイントが頭の中で駆け巡り、尊敬する先輩達と自分を重ね合わせていました」とこれまでのレース人生を回想。そして最終コーナーをミスなく駆け抜けた時点で勝利を確信し、苦節6年、栄光のフィニッシュを遂げた。オフィシャル出身である新帝王のウィニングランを、スタッフも含めた会場全体が祝福すると、「チェッカー後の皆さんが迎えてくれた姿を見て、本当に涙が出ました。6シーズンで3500周ぐらいしていると思うのですが、その全てをコミネの社長に面倒を見て貰いました。やはりどうしても社長を勝たせたかったです。続けて来て良かったです」と喜びを噛み締めた。7周目のダンロップ下での単独スピンもあり、大きく遅れを取っていた貴島選手だが、猛烈な勢いで終盤巻き返し、13周目の最終コーナーで山田選手をイン側から抜き去り、2位でゴール。3位の山田選手は整備ミスでドライタイヤでの走行を余儀なくされ、無念のポジションダウンとなった。
Vitzクラスは、予選で井上満夫選手に5秒差をつけていた高橋宏選手が3連覇を達成。「雨は苦手」と言いつつも、決勝では30秒以上のアドバンテージを保って最終ラップをフィニッシュ。今シーズン参戦する全てのレースを圧勝している高橋選手だが、最終戦はライセンスを取得したばかりの愛息が同クラスに出場予定。貫禄のベテランレーサーVS伸び盛りの若きレーサーという白熱の親子対決が観客を盛り上げそうだ。
Winners Interview TTC1400

優勝
荒川智弘選手
「今回は2018年度も一緒に走った憧れの先輩がいたので、当然楽なレースではないと思っていました。しかし雨の中でたくさんレースをこなしていたのは自分。雨では絶対負けないと自負していました。戦略も含めてチーム力で戦ってきましたので、一番のアドバイザーである蘇武喜和選手に『おめでとう』と言われた時が、一番ブワッと涙がこみ上げて来ましたね。本当に色んな方へのお礼しかないです。ポイント争いが一段落したので、今後はフラットな状態でドライビング技術を追求したい。どんな車でも信頼を持って任せて貰えるぐらい技量を上げたいです」
2位
貴島康博選手
「前の86が2台で競り合っていて危なっかしいので、荒川君の後ろから様子を見ていたのですが、待っていてもしょうがないと思って行ったら、クラッシュに巻き込まれました。その後にペースを上げすぎて、単独スピンしたのも致命的でしたね。その2つがなければトップに行けたかもしれないので残念です。カテゴリー存続を助けるための遊びのスポット参戦でしたが、年間王者になった年に一緒に走っていた荒川君と久々に対戦して楽しかったです。ここまで来たら荒川君に完全優勝を狙って欲しいですよね。応援しています」