Race Report
TTC Rd.5
2023 筑波ツーリングカーシリーズ第5戦
ハードウェットによる難攻不落のラストレース‼TTC1400は三つ巴のバトルを制した丸山翔矢選手が年間チャンピオン獲得‼Vitzクラスは茂木優太選手がデビュー戦以来の優勝に輝く!!
80年代後半から90年代半ばにかけて生産されたEP82型トヨタ・スターレット。TTC1400は、この未だ色褪せぬ人気を誇る名車4台が最終戦で揃い踏みした。これまで4戦フル出場、トータル72ポイントでランキング1位の丸山翔矢選手、逆転勝利の可能性も残されている2位の梅原拓臣選手は57ポイント、42ポイント獲得中の3位・中島明秀選手の3選手に加え、3戦目以来の参戦となるMASAKIYO HORI選手が上位陣をかき乱す刺客となるかが注目される。
今シーズンラストを締め括る5戦目。過去のレースで積み上げた経験や課題、そして自信。制限のある小排気量のマシンにその全てを乗せて、フルパワーで1番手のチェッカーフラッグを受けられるか。年間チャンピオンを懸けて、意地とプライドがせめぎ合う白熱の闘いの火蓋が切って落とされた。
前日から降りしきる雨のせいで、路面状況は開幕戦以来のハードウェット。30度を越える真夏日だった9月のレースから一転。吐く息がほんのり白くなる程の寒暖差があり、メカニックにも経験と勘が試される。行く手を阻む悪路、是が非でも勝利を掴みたいラストレース。それ故に、大荒れの展開が予想された。
徐々に雨脚が強まる中、予選が予定通り8時20分にスタート。梅原選手、丸山選手、中島選手の三車が先頭集団となって、クリーン且つ勇猛果敢に猛アタックを続けた。序盤に抜き出たのは丸山選手。2周目で1分16秒172を叩き出すと、各車そのタイムを基準にトップタイムを目指した。
しかし序盤は後方に紛れ、虎視眈々と逆転の機会を狙っていたダークホース・HORI選手がベテランの本領を発揮。8周目で1分16秒027をマークして、一躍トップに躍り出る。これで1分16秒が2選手、6周目で梅原選手は1分17秒、中島選手は1分18秒を記録し、追撃を試みた。予選終了まで刻一刻と迫る中、これまで安定感ある走行を見せていた梅原選手が9周目の第2ヘアピンでクラッシュパッドにヒット。車体はレース続行に事なきを得たが、直ぐ様、赤旗が振られ、これにて公式戦自体が終了となった。
そして、命運を懸けた15ラップの決勝。遠方の空は雲の切れ間から青空が覗いていたが、サーキット上はまだ厚い雨雲が覆い尽くし、雨脚は依然として弱くない。各車、フォーメーションラップで車体を左右に揺さぶり、路面状況を入念にチェックした後、決戦がいざ始まった。
予選1位のHORI選手、スタートでミスをした丸山選手を追い抜き、梅原選手が一つ順位を上げて2位に浮上。3台の真後ろを中島選手がせめぎ合う。そんな構図で迎えた第1ヘアピンで、開始早々にアクシデントが勃発。なんと中島選手がVitzクラスの高橋宏選手と接触してしまう。中島選手はそのままコースアウトし、戦線離脱を余儀なくされた。
2周目からはHORI選手、オーバーテイクに成功した丸山選手、梅原選手の三つ巴のバトルへ突入。順位は変わらぬまま、全車一歩も譲らない熾烈な争いとなったが、10周目の終盤にその拮抗が破られる。
これから土壇場の大攻防が見られそうな場面で、先頭を堅守していたHORI選手が最終コーナーでのサイド・バイ・サイドでスピン。タイヤバリアに突っ込み、フロントが凹み上がる程に車両が大破し、セーフティーカーが導入。そして予選と同様にレースは赤旗の中断に。決勝は残り5周を消化することなく、そのまま終了となった。
これにより、参戦3シーズン目の丸山選手が初の年間チャンピオンを獲得!「玄人レースに近い中で僕が一番若手。お金もない中で周囲の方々の手厚いサポートを受けて、レースをやらせて貰いました」と周囲への感謝を述べた。そして、来季への参戦も表明し、「ベテランも若手も来てくれると嬉しいです。このN1レースを盛り上げていければなと思います」と意気込みを語った。
5台が参戦したVitzクラスは、第3、4戦で王座を獲得したジェネリック内田選手が不在。そんな中、予選で躍動したのは、ハコ車のデビューイヤーを駆け抜ける茂木優太選手。唯一1分19秒台をマークして、1番手を獲得した。そして、2位は高橋宏選手、3位は息子の謙太選手の父子鷹が表彰台を狙う。
続く決勝では、茂木選手がスタートでホイールをスピンさせるミスにより、順位を一つダウン。出だしでセカンドローからクラス首位に浮上した高橋宏選手だったが、不運にも第一ヘアピンでTTC1400の中島選手と接触。右部分のフロントバンパーに亀裂が入り、周回する度にマシンが異音を轟かせる事態に。4周目の第1ヘアピンを差し掛かる頃には、茂木選手に先頭を明け渡してしまう。
その後、茂木選手は首位を独走。高橋選手の背後にピタリと張り付いていた謙太選手が親子対決を繰り広げ、10周目で2番手に順位を上げた。
そしてTTC1400と同様に10周でレースは中断、終了。茂木選手が他の追随を許さぬ走りで、デビュー戦以来の優勝を飾った。高橋謙太選手が2位、そして松尾亨選手の3位という結果でフィニッシュとなった。
表彰台の中央でトロフィーを掲げた茂木選手は「知らない車の動かし方を発見し、自分のものにできて面白かったです。接触上等みたいな血気盛んなところもすごく好きになりました」と一年間ですっかりハコ車に魅了された様子だった。